第4章 ー雪月華ー
「潤、なの…? …違う、翔…坊ちゃん…?」
涙に歪んだ視線の先に、五助を胸に抱いた翔の姿があった。
煤(すす)に塗れ、黒くなった顔に笑顔を浮かべ、ゆっくりとした足取りで照に歩み寄ると、茫然とする照の前に跪いた。
「潤はね、僕の智を連れて、一緒にお空に行ってしまったの…。僕と五助を残して、ね…」
翔の頬に涙が一筋伝った。
「そん…な…」
「ほら、見えるでしょ?」
愕然とする照に向かって小さく笑うと、翔は空を見上げ、蔵の上を指さした。
照は翔の指の指し示す方へ、ゆっくりと顔を向けた。
そこには、どこまでも続く空に向かって伸びる二本の光の柱。
青と紫の光の柱は、まるで追いかけっこでもするかのように、縺れ合い、絡み合いながら、迷うことなく空へと昇り、やがて真っ白な眩い光へと姿を変えたかと思うと、照と翔に見守られながら消えた。
「それで…、それで幸せなんだね…?」
『あぁ、幸せだよ。こうして一緒にいられるんだから…』
『うん、ずっと一緒だから…』
ー雪月華ー 完