第1章 闇色夢綺譚~花綴り~
【道、振り返り…。】
これは…どうしてこうなった!
じゃなかった。
何故じゃっ!
でもないや…。
「済みません…乾いていないと言うのは嘘なんです…。上等な生地でしたので洗うのに戸惑いまして…」
でも、雨に降られたかのようにびっしょりで、泥汚れも酷かったので…。
と、彼女は申し訳ないように私に説明してくれた。
簡単に説明すると生地が良すぎて汚れを落とすのに躊躇。でも、既に濡れていたので気合いで何とかなるかなって…。
そして、見事にヨレヨレ。
気合いでは無理だと思うよ、コレばっかりは…。
あー、別に謝らなくて良いのだが、これは本当に…。
私は持って来ていた筆を手にし、慣れた手つきで綴った。
書き終わり、それを彼女は声に出して読み上げる。
「これは、私が着ていた…って、」
彼女は目を丸くさせ、驚く。
え…だって私はスーツを着ていたんだ。
それに、こんな綺麗な着物なんて持っていない。
「名前さん、もしかして記憶が…」
あー、うん。そのつもりでいたのだけど…。
ガチで記憶喪失、かも。
その日は皆に会う予定だったのだが、一日延ばされる事になった。
都合が良いと言えば良い。
これまで冷静で居られた私だが、此処に来て初めて考える事を放棄した。
何だ、このトリップは…。
もう、分からん。