第2章 episode.01
陽「おはよう」
そう返すと、ぱっと顔を上げた彼女の表情はどこか嬉しそうに見えた。
音「あの……「おはよー、音葉ぁ」
私に言葉を飛ばしかけた声は、もう一つの声によって落とされてしまうも
彼女は、嫌な顔をせずにその友人に笑みを向けて、出来上がっていたグループに二人で混ざる。
…彼女は何を言おうとしたんだろう。
そう思いながら、グループの輪の中で笑む彼女を見ると違和感を覚えた。
笑んではいるが、どこか窮屈そうな…
勘違いだろうと結論付ければ視線を窓の外へ向ける。
暫くするとチャイムが鳴り、担任が入ってきた。
「よし、席についてるな。今日は転校生を紹介する」
え、何この嫌な予感とベタな展開…この時期の転校生とか…いや、まさかね?
担任の声掛で扉が開き、その人物が教室に足を踏み入れるとざわざわしていた教室内に女子が色めいた。
……私を除いて。
その人物は担任に促されると形の良い唇を開きアルトより少し低めの音を発する。
「月丘 颯吾です。宜しくお願いします」
そう、当たってしまったのだ。
先刻、予感したベッタベタの展開が…。