第2章 動き出す気持ち
あれは……
私が高校を卒業する年のバレンタイン
もうその頃には章ちゃんは
テレビにも少しずつ出始めいて………
学校に来ることさえ
難しくなり始めていた
このまま卒業して
会うことさえ出来なくなる前に
ちゃんと自分の気持ちを伝えよう…
そう決意して
なんとかバレンタイン当日
会う約束をして
出会ってからそれまで
一度も渡すことができなかったチョコを
渡そうと決めたんだ…
その日待ち合わせ場所に来た章ちゃんは
いつめと変わらない笑顔で笑っていて
私はものすごく勇気を振り絞り
一生懸命手作りしたチョコを
章ちゃんに手渡した…
でも………
"ありがとう…かめちゃん(笑)"
そう言って受け取られたチョコは
左手に持たれていた大きな紙袋の中に
無造作に入れられてしまって…
「それ…凄いね……?
もしかして全部チョコレート………?」
そうポツリと呟いた私に
安「あぁ…うん(笑)
今年もいっぱいもらえたわ(笑)」
そう言って見せられた紙袋には
たくさんの……
そりゃもう溢れるぐらいたくさんの
チョコが入っていて…
私が気持ちを伝えようと
必死に作ったチョコは
もうすでにそのたくさんのチョコの中の
1つになってしまっていた……
そのチョコを見た時に
私ははっきりと悟ったんだ……
私は章ちゃんにとって
この大勢の中に紛れるチョコと一緒で
決して特別になんか
なれはしないんだと…