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世界の果てのゴミ捨て場(HQ)

第8章 放課後のHegira(木兎光太郎)







月曜、火曜、水曜日。


週の真ん中、水曜日。
プチ憂鬱だ。今日を乗り越えたってあと2日も学校に行かなきゃいけない。

目覚ましのアラームは今日も同じ時間に鳴り響いた。いつもと同じ制服を着て、掴む電車の吊革。上履き、黒板、学年集会。日が沈んで家に帰れば宿題をやっつけてベッドで眠る。

もうダメだ、この日々のループ、輪廻、巡る平日から脱出したい、解脱したい。



昼休みには、仲の良い友人と。向かい合った机で私は家から持ってきたお弁当を食べている。会話の内容はとりとめのないことだけど、毎日一緒に食べている。もうすぐ彼氏の誕生日なのに何をあげたら良いのかさっぱり分からないんだよね、と愚痴っぽく零す彼女に適当に合わせながら、お弁当に入った冷凍のハンバーグを箸先で切り分ける。作ってくれるお母さんには本当に申し訳ないけれど、おかずのレパートリーもマンネリだ。口に入れなくても味を知ってる。

去年の夏頃、一週間だけお弁当を廃止した。昼ごはんは購買に売っている物。サンドイッチ、ロールパン、メロンパン。すぐに飽きて辞めてしまった。それをきっかけにお昼の充実化は諦めた。だって高校生活もう三年目。最高学年。ラストイヤー。頑張るよりも残り1年弱を我慢したほうが楽なんだ。

ほうれん草のゴマ和えを口に含む。教室はガヤガヤしているけれど、1年の頃には確かにあったフワフワきゃっきゃした空気は影も形もなくなっている。進級してから徐々に、「卒業」という二文字が色づき始めていた。私を含めてクラスメイトは、この生活に慣れてベテランの落ち着きを保っている。もはや退屈している、とも言っていい。

テロリスト襲撃、全校生徒の前でのバンド演奏、お金持ちの御曹司に見初められることもなーんにもない平和な毎日。

劇的なことなんて今さらなくても大丈夫だけど。むしろ面倒くさいと思っちゃうけど。


ただ、いつもと違うこと、起きたらいいな。水曜日。




「あ、俺、焼肉行きたい」


水筒に入った麦茶を飲んでいたら、後ろからそう聞こえてきた。あ、100円みっけ、みたいな言い方だった。

名案、神の啓示、もとい降ってきた思いつきがそのまま声に出たのだろう。軽い言葉はポンと床で弾んで私の後頭部に当たった。

 
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