第5章 本の虫と耳かき
「……ねぇ、うえしょたん」
沈黙を破ったのは瑠璃だった。
「なんでこんな時間にお風呂に?」
「本読んでてさ、気づいたらこの時間にね」
「そうなんだ……ねぇうえしょたん。この後すぐに寝る?」
「いや……まだ起きてるつもりだけど、どうしたの?」
「さっきまで道場で練習してて疲れちゃってね……マッサージお願いしてもいいかな……?」
「まぁ、少しだけなら」
「わぁい♪じゃあ、部屋で待ってるから!」
瑠璃は早足に風呂場を出ていき、その数分後に
将太も風呂場を出ていった。
「あ、きたきた。入っていいよ」
将太が瑠璃の部屋に行くと、瑠璃はすぐに将太を中に入れた。
「んで、マッサージしろって言ったけど、どのへんを?」
「んーとね、肩かなー。やっぱ弓引いてると肩こるからねぇ……」
「はいはい。強くやるけどいい?」
「強さは気にしてないから、うえしょたんの好きにやってくれるといいよ」
「ん。じゃあ、始めるよ」
将太は瑠璃の両肩に手を置いて、親指で肩を強く押し始めた。
「んっ……ほんとに強いね……そのまま続けて……」
肩もみを続けること数十分、将太は突然肩もみをやめてしまった。
「……疲れた」
「えー……」
「そりゃあ、ずっとやってたら疲れるに決まってるだろ……」
「むー……じゃあさ、耳かきしてほしいな……」
「は?自分でやればいいだろ……」
「やだ……うえしょたんやって……」
「……わかった。今回だけな?」
将太は瑠璃の机の上にあった鉛筆立ての中にあった耳かき棒を取ってベッドの上に座った。
「ほら。膝の上に頭乗せて」
「うん」
瑠璃が膝の上に頭を乗せたのを確認した将太は、上を向いていた右耳の穴に耳かき棒を入れて掃除を始めた。
「ん……」
「大丈夫か?痛くない?」
「大丈夫……でも……始めたら眠くなってきた……」
「あー……もし寝そうになったら、そのまま寝ていいよ」
「うん……ありがと……」
瑠璃はお礼を言ってから、すぐに目を閉じた。
その数分後には小さな寝息が聞こえてきた。
「(寝るの早いな……止めるつもりだったけど、やることも無いからそのまま続けるか……)」
将太は自分が満足するまで、寝ている瑠璃の耳かきを続けていた。
その顔は少し幸せそうに見えた。