第12章 王覧試合
立体起動無しのアゲハがリヴァイに勝てるのか。
それは調査兵団でずっと彼女を見て来た仲間達ですら分からなかった。だが一つだけ確かなことがある。
双刃のナイフの様だったリヴァイを今のリヴァイに変えたのは紛れもなくアゲハだ。
そして、恐らく昨日リヴァイがやった技を教えていたのも彼女だろう。
『リヴァイが相手になるとは思わなかったよ、参ったね。』
「それで、どうする気なんだ?」
仮にも兵団内では彼女の方が上官。
『どうもこうもないよ、たぶん負けちゃうかな。私じゃ勝てない。』
「勝てと命令したらどうする?」
意地悪だなぁ、とアゲハは苦笑いを浮かべた。
言ったエルヴィンは至極楽しそうだ。命令だと言ったら彼女は必ず勝つだろう。
「すまない、困っている顔が可愛くてね。今のは忘れてくれ。」
『ある意味、命令された方が楽だったよ。』
第二戦の最終戦。
昨日のリヴァイの活躍もあり、会場の熱気は凄く昂ぶっていた。
それを更に煽る様に、アゲハがリヴァイの上官だとアナウンスが流れる。
俗に言う師弟対決ではないか!と観客達は大喜び。
「お前、手を抜いたら殺すからな。」
『そんな器用な事できないって知ってるでしょ?』
開始の合図が鳴り響く。
体捌きの速さならアゲハの方が速いだろうが、一撃の重さは確実にリヴァイの方が上だ。
イメージするのは壁外の荒野。立体起動無しで巨人に遭遇してしまった。ブレードもない、あるのは自らの手足だけ。
アゲハはスゥーと深呼吸をして、改めてリヴァイを見た。
彼女の出方を伺っていたのだろう、リヴァイの方も自分から仕掛けようとはしない。
「…マズイな。」
ミケはクンクンと鼻を動かす。何かを感じ取ったのだろう。
そして沸き上がる観客達。先に仕掛けたのはアゲハだった。
まるで鞭の様なしなやかで力強い蹴りがリヴァイの頭を狙う。
力比べでまともにやりあっては、如何ともし難い男女の差。
それを少しでも無くする為には蹴りが最善の攻撃だ。
しかし、打ち込まれた彼女の足をがっちり受け止め、リヴァイはそのまま掴んで体勢を崩す。
両者本気だというのがピリピリと伝わってくる。
「そんなもんか?」
掴んでいた足をそのまま放り投げ払ったリヴァイは、一気に体勢を崩すアゲハに詰め寄る。