第11章 誰のもの
生まれ持っての才能なのか、そこでメキメキと頭角を出し、僅か一年で卒団し、いまはここにいる。
彼女の経歴にはとても少女を歪めるような事柄は見つからなかった。
「君はなぜ敬礼を拒むんだい?」
『わからないから、心臓を捧げるってどういうこと?』
「それは…。」
自らを犠牲にしても人類の未来の為に戦う覚悟の証明だと言うには、彼女はまだ幼すぎる様に思えた。
こんな少女に未来を託していいのか、と自分の中にも疑問が芽生える。
『…もし、外から生きて帰れたらわかる気がするので。』
それまで見逃して下さい、そう言ってアゲハは初めて笑ったのだ。