第19章 絶妙な関係
涙を流しながら笑うハンジと、声を押し殺し笑いを我慢しているミケ。
見慣れた兵士の正装ではなく、一般的な正装をしたエルヴィンの隣に、触れようものならばたちまちに削ぎとられそうな程に殺気立ったリヴァイがいた。
そのリヴァイもまた、仕立てられたばかりの余所行きの格好をしていた。
二人の正装は見慣れないだけでどこにも笑いを生む様な要素はない。
ハンジとミケをここまで笑わせているのはもう一人、まるで貴族の御坊ちゃまの様な美少年がそこにいたからだ。
「馬子にもなんとやら、だな。よく似合うじゃないか。」
吹き出しそうになるのをこらえながらミケは言った。
「ぶっはははは〜!ダメだわ、もう、お腹痛いよっ!!」
改めてその美少年を見たハンジが盛大に笑い転げる。
『二人共楽しそうでいいね。』
「だって!これ、もう!!」
笑わずにいられない、と言われてアゲハは今日何度目かの溜息をついた。
確かに着慣れないドレスは嫌だと言った、化粧も苦手だと言った、愛想笑いして言い寄ってくる貴族の男達を相手にするのは気分が悪いとも言った。
確かにそれはアゲハが自分で言った事。
「ランスロット伯爵の頼みでね。まさか自分の婚礼の日に奥方様以外の女性と親しく話すわけにはいかないのだろう。」
「よかったな、似合って。」
エルヴィンとリヴァイの目も明らかに笑っている。
『採寸だけだったから可笑しいと思ったよ。』
まさに美少年。
胸にきつくサラシが巻かれている事に気がつく者はいないだろう。
男装する事だけならばここまで笑わずに済んだだろうが、用意された衣装が酷い。
ダークグリーンのスーツが原型なのだが、フリルで飾られた挙句、ズボンは半ズボン。ハイソックスまで用意されていた。
少年の持つ、どこか中性的な魅力を存分に引き出す衣装なのは間違いないが着ているのは女。
「二日間だけだ、我慢してくれ。」
『別に構わないけどさ。なんか、納得出来ない感。』
中身がアゲハだと知っているからハンジとミケは笑ってしまうが、何も知らない他人が見たらただの美少年。
「そんな顔をしないで普段通りにしてくれ。」
『言葉使いはどうしたらいい?』
「いつも通りで構わないだろう。」
煌びやかなドレスを用意されても困ってしまっただろうが、この姿も困ってしまう。