第19章 絶妙な関係
『エルヴィンは私とは恋愛出来ないって、恋愛関係になる気は無いって言ってるよ。』
「それさ、何年前の話?」
『二年前かな。』
それは第三部隊の隊長になり、スパイ紛いな事をやらされ始めた頃。
エルヴィンに同行して初めて王都へ行った時だった。
843年、秋。兵団内組織が大きく改変された。
幹部兵と言われる様になったのはこの時の改変で、第三分隊の当時の隊長が殉職。
次を引き継いだのが生き残っていた兵達の中でたまたま経験年数が長かった自分だった、それだけのこと。
「これで君とだけの時間を持てる。」
与えられた自分専用の個室。
必要最低限の家具しかない殺風景な部屋に、私物の入った箱を運び込んでいた所にエルヴィンが来た。
『…それ、ここに来るってこと?』
「ダメかい?」
『今は嫌。』
片付けも出来ていない、綺麗に飾り付ける様な物も持っていない。
エルヴィンを部屋に招くなら、彼が喜んでくれるような事をしたい。
自分はいつも彼に頼って押し付けてばかり。
だからこそ、これからはもっとエルヴィンの役に立ちたい、彼の想い描くものを実現させる事に協力したい。
「そうか、では君から招いて貰えるのを待つよ。」
『うん、そうして。』
けれどその後、隊長という立場は想像以上の忙しさで部屋を飾り付ける時間など全く持てず、それどころか散らかるばかり。
幸い、部下達が気を使ってこっそり洗濯物や飲みっぱなしのマグカップなんかは片付けてくれていた。
アゲハ隊長はだらし無い、そう言われ始めたのもこの頃からだ。
部下の命の責任を取らなければならないという事は、簡単ではなかった。
訓練一つで精神的な疲れがひどく、けれどそれだけは絶対に外に見せたくない!と毎日、巨人ではなく自分自身と戦っていた。
そして迎えた壁外調査。
攻撃重視の第三分隊、死者や負傷者が出るの以前からわかっていたはず。
「君のせいじゃない。彼等を殺したのは巨人だ。君じゃない。」
『エルヴィンには全部お見通しなんだね。』
「君の心臓を預かっているからね。」
隊の半数を失い、自分を慕ってくれていた部下のキラキラした目が濁って曇った目に変わってしまっている。
変わり果てた部下達の姿を見ていたら、頭の中がぐるぐると回り始めた。
「アゲハ!しっかりしろ!!」