第4章 in THE TRAIN
今朝、私が動けなくなった階段を登りました。
どうしても、今朝のことを思い出してしまいます。
「今朝は、本当にありがとうございました。」
「気にしなくていいって。医者の息子が具合悪そうな人ほっとくなんて出来ないから。」
雪ノ下先輩のお父様ってお医者さんなんですか。そういえば、少し離れたところに雪ノ下医院ってあった気がします。
「じゃ、また明日ね。伏見サン。」
何故かドキドキして声が出なくて、私は彼の背中を見送ることしかできませんでした。
『また明日』会って、話せて、一緒に帰ることが出来るなら、今度こそしっかり『また明日』と挨拶したいと思いました。
…また明日。
心の中で唱えても伝わらないことはわかっているけれど、唱えてしまいました。
劣等感にも似た憧れと、なんだかふわふわとした気持ち。
この気持ちは一体何なのでしょうか。