第2章 起
部隊の帰還に際し、本丸に残されていた者たちは総出でそれを迎えた。
だがそれは歓迎ムードとは程遠く、皆一様に不安そうな顔をしては遠巻きに見守っていた。
事態は清光らが思った以上に差し迫っていたのだ。
「たった今、主が政府の役人に連れて行かれた」
温度の無い声で、へし切り長谷部はそう告げた。
「大和守……勿論お前も引き渡す様、命が出ている」
「安定はわざとやった訳じゃ無いんだ、急に奴らが襲ってきて仕方なくッ!」
「そんな事!……言われずとも皆わかっている」
長谷部の硬く握った拳が、行き場の無い怒りが。振り下ろされ膝を打つ。
安定は声にならない声で、謝った。
「……よしてくれ、謝るべきは主にだろう。後で政府の者が迎えに来るそうだ。それまでに傷の手当てをしておけ。それと加州、疲れているところ悪いが報告書を急ぎで上げてくれ」
踵を返した長谷部は足早に去っていった。おそらくやるべき事が山積みなのだろう。