第5章 愛玩(及川徹の場合)
じわと拡がった私の瞳孔を見るなり、彼が笑む。声に出しはしないけれど、その瞳はこう語っている。
お前は本当にわるい子だね。
カメラの前で痴態を晒して。
なのに、感じてる。
「……ん、──……っ」
僅か、身を震わせて彼が果てた。
杭を引き抜いて吐露する及川さんが、スマホを持っていないほうの手で私の顎を掬う。
自らの白濁で汚れていく私を、カメラに収めるためだ。ここで、やっとこの動画を行方を悟った。
送りつけるのだろう、私の、元恋人に。この女の所有権は自分にあるのだと、そう誇示するために。
「椿、お前は俺のなに?」
彼は問うた。
私は答える。
「あなたの、……ペット、です」
これでもかと目を細めて笑んだ彼。
途端に普段の声色に戻って「そう、いい子だね」私の髪を撫でる。優しい眼差し、優しい手。
慣れた様子でスマホを操作する彼の唇が、今宵、最後の言葉を紡いだ。
「──次裏切ったら、殺しちゃうから」
了