第4章 愛玩(木兎光太郎の場合)
優越感だろうか。
いや、背徳心なのかもしれない。
「だーめ、よそ見禁止。今はテレビんなかの俺じゃなくて、目の前にいる俺を見んの」
鮮赤のユニフォームに身を包む彼。
この国の期待を背負い、観衆の関心と感心を欲しいままに、世界の舞台で戦う羨望の的。
私は、いま、木兎光太郎に抱かれているのだ。幾本ものスパイクを叩きこみ、数多の点を捥ぎ獲るその腕が、私を抱いている。
「……こっち見て、椿」
私の視線すらも、逃すまいとして。
優越と、ひと匙の背徳。
誰もが見知るウィングスパイカーの笑顔を情慾に歪ませる。その快感に、私は溺れたのだ。
「っは、あ、……きもち、い」
溺れて、乱れて、堕ちた先。
限界を迎えた疼きを声に出して訴えて「光太郎、……こっちも」素直に彼を欲する。
舐られる乳房の反対側を弄んでいた男らしい手。骨張ったその指先を掴んで、自ら秘所へと連れ誘った。
「おっ、椿ちゃんてば大胆」
瞳の黄金を綻ばせて彼が言う。