第3章 ひとはその奇跡を運命と呼ぶ(松川一静)
「ほら、……教えてごらん」
答えを急かすような指に際どい場所をなぞられた。
ショーツのクロッチすれすれのところを上下に、腿の付根に沿うようにして撫でられる。
「……あ、……あっ」
触れてほしいそこの近くを彼がなぞる度、弱々しい声が漏れた。
私の答えなんてひとつしかないのに、それがなかなか言い出せない。声に出してねだる自分を想像しただけで頰が熱くなって、ついつい口を噤んでしまう。
けれど先輩は、……一静さんは、そんな私の機微まで見抜いているらしかった。
胸元に埋ずめられていた彼の唇が離れて、再び触れるだけのキスを注がれる。彼のおでこと私の前髪が、こつん、とぶつかった。
「ちゃーんとお口に出して言おうな? じゃなきゃ、弄ってやんねえよ」
見つめられる。
零距離で、刺すように。
逃げることなんてもちろん許されない。私は、ねだるしかないのだと、彼の瞳がそう物語る。