第2章 二度目のハートはささやかな約束と永遠の(黒尾鉄朗)
メリークリスマスはなんだか気恥ずかしくて。
「いつもお疲れさま」
言えなかった八文字のかわりに、私はそう微笑した。
二人きりのささやかな聖夜。
春高を控える彼の休息を優先して、今年は宅パで祝おうと決めていた。
差しだしたプレゼントは、鉄朗が以前から気になると言っていた今冬限定モデルのスウェット。
海外スポーツブランドのロゴが刺繍されている、彼曰く「すげえ格好良い」やつ。
「うおっ、マジか、ありがとう」
プレゼントのリボンを解いた彼はほとんど表情を変えずに、しかし僅かに声を弾ませてそう言った。
普段は全然まったく毛ほども素直じゃないし意地悪言ってばかりだけど、鉄朗は「ありがとう」と「ごめんなさい」がちゃんと言えるひとだ。
こういうところ、好きだなあ、と改めて思う。