第3章 延長、お願いします。
「あの、さ。せっかくだし…もうちょっと飲んでかない?」
「…え?」
フラれた相手にいきなり何言ってんだってカンジだよね。わかってます、わかってるよ。
「あの。えっと~…。芹奈が時間、大丈夫ならで、いいんだけど」
「…時間は、大丈夫、だけど…」
「いやいや、ほら。なんかさ。このまま一人で飲むのも淋しいっつーか…」
「…」
「パーッと景気良く飲んじゃおっかなっ?…ってな気分ではあるんだけど。盛大に一人スッキリ祭を開催しちゃってもいいんだけどさー…」
ま、よーするにヤケ酒だよね。つまりは。ええ。
「でも、それするとちょーっとヤバイんだよねぇ…」
「…どういう、こと?」
「実は、俺、明日も結構朝早いんだよ。だから、そんな深酒する訳にはいかないっつーか…」
「…あ!そっか。ドラマの撮影―…?」
「そうそうそう!だから、ほら。俺ひとりで飲んだらヤバイと思うんだよね?歯止めきかなそうだし。ねぇ?」
「う、うん…?」
「だから―…。芹奈にこんなこと頼むのも何なんだけど、できれば、ご一緒に~…」
「…」
「でもって、できれば俺をセーブして頂きたいかな~、な~んて…」
「…えっと…」
「あ、無理にとは言わないっす!もし、芹奈がヤじゃなければっ。で、いいん、だけど…」
「…」
「…どっすか?付き合ってくれない?もう…一杯くらい」
「…」
「お願いっ!ねっ?このとーりっ!!」
「……フッ」
半強制的なお願いだったけど、芹奈は少し笑って。快く付き合ってくれることになった。
うん。失恋した直後にナンなんだけど、もうちょっと一緒にいたいかな~って。恋人にはなれなくても、もともと仲は良いし、二人飲み、初めてだし。何より、やっぱ芹奈といると楽しいし。…いやいや、未練じゃないよ?スッパリ諦めますよ。未練じゃ…
未練か?やっぱ。