第11章 理想はOK
うっすら、そんなバカみたいな妄想してた俺の目に、現実が映った。
「っ」
…震えてる。芹奈の小さな手が。
顔の前で祈るみたいにギュッて組んでる手が、何かを我慢するみたいに強く握ってる、その手が
…震えてる。
「…」
そんな。俺、鬼畜じゃねーから。ね?しませんよ。あなたのことが大好きなんだからさ。そんな嫌われちゃいそうなヒドイことはしないっての。
だから、そんな硬くなんないで。怖がんないで。安心して、俺に身をゆだねて…?
「…芹奈」
俺は芹奈の肩を抱き寄せると、その腕を掴んで、ゆっくり、顔を近づけて…
「…チュッ」
震える芹奈に、そっと、キスをした。