第11章 理想はOK
「…ね。してい?」
「っ」
「…」
やっぱり『ダメ』とは言わない。『いい』とも、もちろん言わないけど…。
「芹奈」
「!」
「…芹奈…」
「―――」
カウンターだから隣同士なんだけど、その距離をさらに縮めて、顔を寄せて、覗き込んだら
芹奈は
目が合うと、反射みたいにちょっと首をすくめてうつむいて
そして
キュッと目を瞑った。
「…」
…あのさ。
それ、OKって取るよ?大体の男が。それはOKだと思っちゃう反応だよ?ねえ。わかってる?テンパってるだけなのかもしんないけど…。マジでいいの?しちゃっても。もう俺、射程圏内入っちゃってるよ?
目を閉じてる芹奈は、うさちゃんじゃなく、いつもの芹奈。間近でマジマジ顔を見つめながら、ぼんやりと考えた。
もし、このままホントにキスして。したとして。それで俺、忘れられるのかな、って。
ま、諦めなきゃなんないのはわかってんだけどさ。でも、もしかしたら、このまま…なんか流れで、そういう雰囲気になっちゃったりして?んで、そのまま…その、既成事実?ができちゃったら、さ。そしたら、もしかして俺のこと、そういう風に見てくれるかも…