第10章 悪あがき
「わかった。じゃ、笑わなきゃいいんだ?それならわかんない。今度こそなりすます!」
「笑わないでいられるの?」
「…」
「…」
「…ずっとは、無理、かな」
「でしょ?(笑)」
「難しいな~、他人になるって…」
「ふふ。なんなくていいじゃん。いっつも楽しそうにしてる相葉くんが、スキだよ?私は」
「…ホントに?」
「ホントホント。相葉くんの笑顔、大好きだもん。だから…笑って?はい、こっち!スマイルくださ~い、相葉さんっ♪」
カメラマンみたいに片目瞑って構えてる。そう来たら…ノリますよ?
「…(キメッ!)」
「ふっ。そんな顔ヤダっ、真面目に!(笑)」
「え?ちょっ…。今、結構マジなキメ顔だったんだけど、俺。ねえって。ちょっと!笑うとこじゃないよっ!?」
「あはははっ。ごめんごめんっ」
「ゴメンて言いながら笑うな!てか、ゴメンて言うなっ」
「ご~め~ん~(笑)」
仲いいでしょ、俺ら。ホントそう思う。今日、一段とそう思う。恋人同士でも全然イケるくらい、いい雰囲気でしょ?
でも…
うん。どうしようもないからさ。諦めなきゃだから。今日だって、もう結構な時間になってきたし。このままずっと、こうして楽しく過ごしてたいけど、そうもいかないから。そろそろお開きにしなきゃって思ってるんだけど、なかなかきっかけがね。だって心底楽しいから。
もう、いっそのこと
…嫌いになれればいいのに。顔も見たくないくらいに、嫌えれば、いいのに…。
「…」
そう思いながら、ぼんやり、隣の芹奈を眺めた。俺のお勧めカクテルを、『美味し~っ!』って。クリティカルヒットだったみたいで。ちょびっと口に含んでは、ホントに美味しそうな、なんか幸せそうな顔して飲んでる。
「…ねぇ」
「うん?」
その余韻のままで俺を見上げた芹奈は、なんていうか
「…」
「?なに?」
こっちも、クリティカルヒットっていうか。なんかもう、すげー可愛いかった。俺、ガチでキュンってなってた。素直に。やっぱ好きだなって。芹奈のこと、すげ~好きだなって思いながら、じーって見つめちゃって。ホントこのまま、ぎゅって抱きしめてぇなって…。俺のものに、したいな、って…。