第9章 何事も、努力。
「ね、芹奈さ」
「うん?」
「さっき、フラれたらもう好きでいられない、みたなこと言ってたけどさ」
「…うん…」
「俺、芹奈のこと、たぶん勝手に好きでいるよ」
「っ!」
「あ。違う違うっ。ストーカーみたいな、とか、そゆんじゃなくて!なんつーの?ほら。そんなさ、『ハイ次!』とか、無理じゃん?こーゆーことって」
「…ん…」
「だから。もちろんスッパリ諦めるけどね?忘れるけど。…でも、そんなスグには、ちょっと無理かなって、思うからさ」
「…」
「だから、自然に忘れるまで、俺、芹奈のこと…好きでいていい?」
「…相葉くん…」
「あ~も、ダメ!泣くのはダメ!反則!!」
「う…ゴメン…っ」
「謝るのもナシ!ね?」
「んっ…うん…」
「…ダメって言われても、たぶん俺、しばらくは好きでいると思うけどね…」
「…」
「…」
「…ん。嬉しい…」
「ホント?『嬉しい』?…ちょっとちょっと。そんなこと言われると―…長引いちゃうんだけど。後遺症が」
「ふふっ…」
「や、笑いごとじゃないよ?笑うとこでもないでしょ」
「…ゴメン」
「あ。また謝った」
「あ」
「…ふふっ」
「ふふふ…」
「…まあ、全然気にしないでいいんだけどね。俺が勝手に、勝手なこと言ってるだけだからさ」
「…ん…」
うん。そうなんだよね。無理なんだよ。無理やり忘れるなんてできないって。忘れなきゃって、諦めなきゃって思ったってさ。
やっぱ、好きなんだもん。スゲー好きなんだもん。しょうがないじゃん。そんな簡単じゃねえんだよ。自分の意思で止められるくらいなら、初めから好きになったりしねーって話ですよ。
俺、1回本気で好きになった人って、絶対嫌いにはならないと思うんだよね。それこそ一生ずっと。次に彼女ができても、きっと芹奈に会えば、『あ~、やっぱ好きだな』って。きっと思う。燃え上がるような恋とは違うかもしれないけど、やっぱりそう思うよ、きっと。
俺、別に変じゃないよね?だって本気で恋した相手なら、いつ会っても胸が熱くなって当然じゃない?って、俺は思う。
だからさ。
努力は、いるよね。すごく。
『忘れる』ってなると。