第9章 何事も、努力。
「芹奈…」
「…うん?」
俺、やっぱり…
「…」
「?」
「…。あ。次、なに飲む?」
「う~ん…。サッパリしてるやつ?わかんないけど、そんな甘すぎないのがいいかな」
「じゃさ、俺決めていい?好き嫌い、ないよね」
「え?うん…」
「マスター!」
たぶん聞きなれない名前のカクテルだったんだろうね。『???』みたいな顔で俺のこと見てるし。
「ほら。俺、一応バーテンダーの修行とか。してましたから?」
「…あ!あ~~…。そうだよねぇ?」
「そうなんですよ、実は(笑)」
「なぁんだ…。じゃ、最初から任せればよかった」
「いやいや。ほら。ここはちゃんとしたプロがね?その店にはその店なりの色ってもんが…」
「ふふっ。実は忘れてるんでしょ」
「いえいえ、憶えてますよ?そりゃ。当たり前じゃないっすか!これでも主役だったんだよ?」
「ホントぉ?んじゃ、今何か作ってって言ったら作れる?ドラマで作ってたやつ」
「そ、それ、は~…」
「…やっぱ適当(笑)」
「褒められたんだって、俺!!…当時は」
「『当時は』(笑)」
「…ま、人間はさ?忘れる生き物だから。うん。忘れてナンボみたいなとこあるから」
「あはははっ。やっぱテキト~」
…そうだよな。自分で言っといてなんだけど、ホントそう。人間の特技だよね。『忘れる』って。素敵な能力だよ。