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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第9章 先輩と後輩と私




「わかりました……上手く出来る自信はありませんが、不安に負けず全力で取り組ませて頂きます」

「うんうん、前向きな答えをありがとう。それじゃあ期待しているよ」

「ありがとうございます!ではそろそろ夕食の時間なので調理を始めなければ……」


時計を見てギョッとする。そんなに話をしていた気はしないけどあれから30分も経っていた。軽くお辞儀をして慌てて踵を返す。
が、その前に突然壁が現れた。


「あー、ストップ御崎さん、ちょっと待ってね」

「万理さん!びっくりしましたよ、何でしょうか?」

「いやー、なんだろうね、その、ええと……君に会わせたい人が……」


万理さんが何やらご両親に彼女でも紹介してくるような言葉を発する。ちょっと面白いなと思っていると、扉がすごい勢いで開いた。


「じゃじゃーん!呼ばれて飛び出て!いてっ!」

「こら、失礼だよ」

「叩くことないじゃんかー!家庭内DVだー!」

「家庭かよ!これは躾だよ躾!」

「DV妻は皆そう言うよー!」

「俺が妻なの!?」

「夫が良かった?」

「どちらかと言うと俺の方が夫っぽいだろ……ってもうええわ!」


えっ?何この夫婦漫才。と思って二度見して気付く。


「あの……はじめまして、恐れ多いのでございますが……天下の大御所Re:vale様では……?」


夫婦漫才を見届けた後でも、天下のアイドルを前にひいぃと全身が引けてしまい、慌ててお辞儀をしてから漸く言葉を発する事が出来た。そんな私を見て口に手を当てつつ虚ろな瞳で万理さんを見る千さん。


「ちょっと万、御崎ちゃんになんて教え方してるの、すごい怯えてるじゃない」

「わー!可愛いねー!御崎ちゃん!!万さんいいなー、こんなカワイイ子とお仕事出来るなんて!俺は百!よろしく~!ねえねえ可愛いのにモデルとか女優とかやってないの?」

「よ、よろしくお願いします……ええと……そんな……滅相もない……」


一方百さんは興味津々と言った感じで私と握手を(半ば強制的に)してくる。


「はは。Re:valeが来ると元気で賑やかで楽しいね」

「社長さんもお元気そうで何よりです」

「あはは、若い子には負けられないからね。そうそう正式に挨拶がまだだったね、この子は最近入った新人だよ」


社長がそっと私を紹介してきた。

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