第9章 先輩と後輩と私
「んー!いやぁ、御崎さんの作ってくれる料理ってほんとに美味しいね!」
「yes……私の国のシェフとは違ったテクニックを持っていて、そしてとても美味しい。御崎……私の国に連れて帰りたい……毎日私のご飯を作ってほしいデス……」
「ナギさんそれっ……!!」
口に運びかけていたサンドイッチを下ろすとバッとナギくんを見る陸くん。口の端に卵が付いていることに気付いていないみたいだ。
「あはは、私じゃシェフは務まらないよ~、それに、今ここで毎日作るんだからいいじゃない?あと陸くん、ここ卵ついてるよ」
「……Oh」
「……抜け駆けはずるいですよ。大和さんいなくて良かったですね」
「……内緒デスヨ」
「二人でなにコソコソしてるの??」
「あっ!あーええと!卵付いてたの恥ずかしいなーって!あははは、教えてくれてありがとうございます!」
なんだかコソコソしていてぎこちなかったけど、まぁお年頃だからかなと思う事にして私はスープを飲む。
暖かくほんのり塩辛いそれは、甘めの食パンと野菜のサッパリ感によくマッチしていて、我ながらなかなかいい塩加減だ。
「御崎さんは今日はこの後また勉強?」
「うん、そうなの。この業界のことたくさん学べて楽しいし、でも奥深くて難しいから、とてもやり甲斐があるよ!」
陸くんがふと聞いてきた言葉に、待ってましたと言わんばかりに話し出す。覚えた事が多くて、漸く皆や周りの事を少しずつ知れてきた感じがとても嬉しい。それからは、さっきまで学んだ事をどんどん話した。時折二人が思い出のエピソードを話してくれて、より一層理解が深まる。TRIGGERやブラック&ホワイトの事、NATSUしようぜの盗作問題の事、ゼロアリーナでの事に、Re:valeの事。そして、万理さんが元Re:valeだった事も聞けた。
確かにイケメンで声もいいなとは思っていたけどまさか元ミュージシャンだったとは。
今日一番の驚きかもしれない。後で時間があったら直接聞いてみよう。
「私がいつか誰かのマネージャー手伝いみたいな感じで入った時に、お世話になるかも知れない人達の事を詳しく知れて良かった!ありがとう2人とも!」
「役に立ててよかったよ!」
「me to!」
学ぶ事はまだまだあるけど、本当に奥が深く、人の数だけ繋がりのある職場だなぁ……。