第9章 先輩と後輩と私
「あっという間にお昼も近いね。じゃあ寮のお昼ご飯を作ってきてもらえるかな?」
「分かりました!」
「今日はナギくん、陸くんが休みだから、二人分よろしくね」
「はい!」
教えてもらった事を反芻しながら私は隣の建物へと移り、台所へと向かう。
ナギくんは部屋でここな?と言うアニメを見ているらしく出てこない。陸くんも部屋に居るのか、あまり物音がしなかった。
今日はコンソメスープに、野菜たっぷりのサンドイッチとやわらかジューシーなハムと卵サンドイッチの二種類。どっちも体を冷やさないようにトーストしてあるからホットサンド、が正しいかな。
「陸くーん!ナギくーん!お昼出来たわよー!」
下から呼んでも聞こえないかな?
迎えに行こうかと階段を曲がると、上から「ハイ!」と言う声が2つ聞こえた。いや、むしろ片方はHiかもしれない。
そんなどうでもいいことを思いながらキッチンに戻る。
頭をたくさん使ったから私も結構お腹減っちゃったな。
でも、いくら年上だからって雇われてる方が先に座るのも問題だから、2人をドアの近くで待つ。
「あっ、待っててくれたの?ありがとう御崎さん!」
「Oh、御崎メイドみたいデス!私の家、メイドたくさんいました。ですが、日本のメイドのプリティさにはかないません……!そこで今度御崎もメイドの服装で仕事をしてくれませんカ……?」
「却下ね、動き辛そうだし。と言うかナギくん何者……普通家にメイドっていないもんじゃ……?」
「ナギさん謎多いですよね。この間衛兵ってナチュラルに言ってたし」
軽い冗談だとあしらおうかと思ったけど、ナギくんってほんとに王子様だったりしてね。なんて思ってたら陸君がパワーワードを放り込んでくる。
「衛兵!?」
「Oh……日本の警備兵みたいなものデス……」
「それを言うなら警備員ね。兵なんてこの時代そこら辺にいないわよ」
これ本当に王子様説濃いんじゃない?ほんとに疑惑が深まっていく。
「あはは、御崎さんもだいぶ慣れてきたみたいだね!朝も何やら楽しそうだったみたいだし!」
「朝っ……あー、ほら、サンドイッチホットにしてあるから冷めないうちに食べましょ!」
陸くんにまで聞こえていたのか……私は恥ずかしくなって食卓へと促して誤魔化す事でその場を凌ぐのだった。