第9章 先輩と後輩と私
「はは、大和くんも大人気ないことしてるからお互い様じゃないかな?」
「……見てたんすか」
「あれだけワイワイしてたらちょっとは気になるよ」
頬をカリカリと指で掻きながら苦笑いをする大和くんに、万理さんは微笑みながらシレッと返す。
「ほらほら、千達が迎えに来ちゃうからそろそろ表に出てないと。今日は合同インタビューなんだから待たせないようにね」
「はーい」
「いってらっしゃい」
みんなの背中を見送りながら、聞き慣れない名前にはてなが浮かぶ。ユキ……とは誰か後で聞いておこう。今朝の八乙女さんとりがー事件の時みたいになってはまずいもんね。
3人は仕事へ、ナギくんはここなを見に行く。私と万理さんは事務所に戻るとコーヒーを入れながら今日の仕事について話を始めた。
「今日は一日、芸能関係の話を聞いてもらうよ。資料とか見ながら彼等の事と、彼等の周りの事を覚えてね」
「はい!」
「それと、さっきはちょっと調子乗ってふざけた事言ってごめんね?面白そうだったからつい混ざっちゃった」
「ふふ、面白かったですし、おかげでなんとかまとまったのでありがたかったです」
律儀に謝ってくるなんて、大人だなぁ……。コーヒーをすすりながら資料へ目を落とす。
今日のほとんどはこの勉強に費やされるようで、雑誌などのページが積み重なっていて、とても分厚い。
「じゃあ早速始めるよ」
「はい、お願いします!」
そこからは万理さんの教え方がとても分かりやすく、興味深く、奥の深い世界だった。
アイドリッシュセブンの始まりから今に至るまで、各個人やユニットの活動など、このグループだけでも大きな幅がある。それぞれの得意分野を活かしてある活動内容はとても目を見張るものがあった。
また、そこからTRIGGER、Re:vale……八乙女さんやさっき話に上がった千さんの所属するグループとの話など、たくさんの事を教えてもらい、一時的にとはいえ頭はパンパン状態だ。
重要な事はメモを取る派なんだけど、重要な事が多すぎて書き込むのが追い付かなくなり、何度か話を止めてもらいながらの勉強会となった。その度に嫌な顔一つせず「ゆっくりでいいよ」とサポートしてくれる万理さんはとても頼りがいのある大人という感じがあり、私とこんな事務所の人になりたいなとひっそりと思うのであった。