第9章 先輩と後輩と私
「なんだ、煮えきらないな……お兄さんと……いや、俺と仲良くするのそんなに嫌か?」
もごもごとハッキリ言わない私を見て面白い遊びでも思いついたのか、突然声のトーンを下げて私に歩み寄ると腰に手を当てて抱き寄せ、俗に言う顎クイをサラッとやってのけた。
「!!!?」
多少免疫はついたものの、顎クイなんて経験無いもんだからびっくりして固まってしまう。
私は気が動転して固まっている分、むしろ周りがギャーギャー騒ぎ出して大変だ。
「こンの……変態親父!!」
「ヤマト!ズルイ!ワタシもやりたいデス!!」
「や、や、大和さんセクハラですよ!!……あっ」
バッと私を大和くんから引き剥がすとガミガミ怒り出す三月くんに、何故か羨ましがってるナギくん。引き剥がされた私はと言うと勢い余って転びかけたけど、ちょっと赤くなりながら大和くんをたしなめてる壮五くんに抱き止められる形となった。
「びっくりした、転ぶかと思った。ありがとう壮五く……ん」
顔を上げながらお礼を言うと、思ったより顔が近くて流石に驚いてしまった。失礼だったかなと思っていると、私よりも驚いた顔をしている壮五くんは徐々に赤さを増していく。
「ごめんなさっ……あっ……その、これは……っ不可抗力でっ!」
私の肩を掴んでバッと離すと、真っ赤な顔を背けながら謝罪の意を述べる壮五くん。
「どうしたの皆?」
ギャーギャー騒ぎは五月蝿さを増し、とうとう万理さんが現れるハメになった。あーあ、怒られちゃうぞこれ……。
軽く私をリンチしてるのではと見られかねないほどの光景に、万理さんはちょっと悩んでから口を開いた。
「なんだ、いいなー。俺も御崎さんと仲良くしたいなー」
「万理さん!?」
意外と万理さんも天然なの……?
ポカンと口を開いた私に万理さん含めてみんなケラケラと笑っているところを見ると、ここはいつもこうなんだなと改めて思わされた。
「それじゃ、これから御崎さんは勤務時間になるよ。……つまり、今から俺のなんで。みんなはお仕事行ってらっしゃい。ナギくんはいい子だからお部屋でここなでも見ていようね」
「万理さん……結構えぐいこと言いますねー」
救世主かと思った万理さんもノリがいいらしくおフザケに参加してきて、大和くんも苦笑い。ダメだこれは、収拾つかない。