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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第9章 先輩と後輩と私




「そろそろ失礼致します……!」

「おう、頑張れよ」

「ありがとうございます!」


見た目怖いけどいい人そう。そんな事を思いつつ曲がった先の事務所に私はナギくんを連れて急いで入ると、壮五くん、三月くん、大和くんが仕事へ行く準備をしていた。


「御崎さん、おはようございます」

「御崎、おはよう!ナギはもう帰ってきたのか?」

「ワタシは御崎と愛の逃避行を……」

「お、おはよう、壮五くん、三月くん……ナギくんは誤解招くこと言わなくていいからね」


ニコニコと挨拶してくれる2人にナギくんが爆弾を放り込むと、私は静かにそれを取り除く。


「はは、大方ナギの事だから人目を集め過ぎたんだろ。ハイハイ、仲良しはそこまでにしてお手手離しましょーねー」

「あっ!ご、ごめんナギくん!まだ繋ぎっぱなしだった……」


大和くんに言われてから、アイドルの手を繋ぎっぱなしだったと言う事実に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、慌てて手を離すとナギくんはなんだか寂しそうな子犬オーラが出ていたが気にしないことにする。


「ヤマト……ワタシと御崎、言われなければこのままでしたのに……」

「ハイハイ。コイツの仕事始まったらそもそも離さなきゃなんないだろ」


ムスッとするナギくんに、ケラケラと、それでいてバッサリと切り捨てる大和くんは本当に見ていて面白い。つられて笑いながらやり取りを眺めていると、大和くんがふと思い出したようにこっちを見て、ニィっと笑いながら口を開いた。


「そーだ、おはよーさん……御崎」

「……っ、おはよう、大和くん」


昨日の事を思い出し、少し恥ずかしくなりながら要望通りであろう答えを返す。
すると、本人は満足げにうんうんと頷きながら笑っているが、周りは呆気に取られていた。


「大和さん、どこかすごく満足そうなのはどうしてですか……?」

「おっさん!いつの間に仲良くなったんだ!?」

「んー?満足そうか?普通だろ普通。それに、同い年なんだから仲良くなってもいいだろー?なぁ、御崎」

「はぁ……まぁ、ええと、うん、そう……なのかな」


昨日一日一番よそよそしかったのに、急に親しくなってれば驚くよね。

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