第9章 先輩と後輩と私
小鳥遊プロダクションまでなるべく小道を選んで進んでいく。
あと少しと思った時、ナギくんが誰かに引き止められる。
まずい、またファン?!
「お前……やっぱアイドリッシュセブンの六弥か。こんな所で何してんだ?誘拐されてんの?」
「い、いえ!そういう訳ではなく!!あの、今急いでいて……!」
「OH、そういうアナタは八乙女氏!アナタこそこんな所で何を?」
「えっ、ナギくん知り合い??」
改めて引き止めた相手を見上げると、色白で髪も白、鋭い目は見るだけで何かを切り裂けそうな程に迫力がある。しかし、それも含めてとても整った顔立ちは〝theイケメン〟と言ったところか。私とは今まで縁のないジャンルだったけど、この2日間でだいぶ目は慣れてきたようだ。
「はじめまして」
「あ……あぁ、よろしく。なぁお前、俺を見て驚かないのか?」
「驚く……? そういえば、確かにとてもカッコイイですね!女性と初めて会う時はあまりのかっこよさにいつも驚かれるのですか?」
有名人?それとも指名手配犯……?
あまりにも分からなかったのでとりあえず褒めながら、チラとナギくんに助けを求める。
「御崎は業界の事あまり詳しくないのデス。TRIGGERどころか最初はワタシ達の事も知りませんでした」
ナギくんは思ってたより気が利くようで言いたい事を理解してくれたらしい。とりがーとは何の事か分からないけど、おそらくアイドリッシュセブンと並べてると言う事はアイドルグループかなにかなんだろう。あちゃー、失礼な事をしてしまった……。
「あー、とにかく俺らみたいなのに興味が無いのは分かったが、なんでそんなやつと一緒にいるんだ?」
「先日から小鳥遊事務所で努めさせていただく事となりました、瑠璃華御崎と申します。御挨拶が遅れました事、また、あなたの事を存じ上げませんでした事をお詫び申し上げます」
「うお、そんな改まんなくていいって。ん?お前よく見りゃ結構可愛い顔してんな。あんまり困った顔し過ぎると元の良さが台無しになっちまうからその辺にしておけよ」
なんだ、すごいさらっとお世辞を混ぜてくる人だな、業界にはこう言う人もいるのか。
そしてふと腕時計を見るともう出勤時間ぎりぎり。
そろそろ行かなくちゃ。