• テキストサイズ

家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第9章 先輩と後輩と私




「やはり御崎でしたか!」


キラッキラと、そりゃもうキラッキラと、輝かんばかりの笑顔と金髪にカタコトのイケメン。


「ナギくん?どうしてこんな時間に?」

「ミツキに『たまには健康的に散歩でもしてこい!』と叩き出されてしまいマシタ……朝イチでここなを見ていたと言うのに……」

「あはは……それは大変そうだ、三月くん皆のお兄ちゃんしてるねぇ……」

「ミツキはとてもスパルタ……でも!今日はそんな偶然が女神との出会いに導いてくれたのデス!ミツキ!感謝!!」


オーバーなリアクションですら様になっているけど……相手が私だとどうにも決まらないだろうに。マスクと帽子はあるものの、どれだけ隠しても王子様オーラは隠しきれていない。
幸い、学生の登校時間ではないからまだ人通りは少ない……が、それでも都会の真ん中ら辺。お散歩してる主婦や通勤中のOLなんてざらにいるもんで、そろそろ人目を惹き付け始めている。あぁもう、この王子様オーラなんとかして欲しいな……。
と、そんな時。


「あっ、あの……!ナギくんですよね!?」


歩いていたOLがふと声を掛けてきた。まずい。ナギくん……と思って見ると、もう既にお辞儀からの握手へと入っていた。これは持ち前のものなのかアイドル故のものなのかまでは分からないけど、とても律儀な挨拶に見える。


「OH……レディとの出会いに感謝します」

「な、ナギくん!えーと……あ、そう!そうだ、そういえばそろそろ撮影じゃなかったっけ!?」


チラチラと視線が増えてきていよいよまずい。とりあえず咄嗟に嘘を吐いて、握手が終わったナギくんを確保する。


「? 今日はワタシはOFF……むぐっ」

「すみません、応援ありがとうございます!今から急ぎの用事がありますので、失礼します!今後ともアイドリッシュセブンをよろしくお願いします!」


とりあえずコーヒーを飲み干して缶を捨てると、あまり目深には被られていなかったナギくんの帽子をグッと目の下まで一気に下ろし、「what's!?」の声は無視して腕を掴んで歩き出した。


「私ナギくん推しなんです!!会えて嬉しかった……これからも頑張ってくださいー!!」


ありがとうございますでも大声出さないでください!お願いですから!!

内心泣き叫びそうになりながら早歩きで公園を飛び出した。

/ 114ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp