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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第9章 先輩と後輩と私





じりりり、じりりり。
無機質で殺風景な部屋に響く、これまた無機質な音。

朝か。いつの間にか眠っていたようだ。電気は無意識に消していたらしいがテレビは付けっぱなしのまま。
時刻は6時30分。テレビ画面の左上に表示されている時間を確認して欠伸をする。
淡々と情報を流すいつもの番組では朝早くに占いをしているが、それにもまだ余裕で間に合いそうなほど早い。
仕事の環境が変わって、夜の時間も余裕を持って過ごすことが出来たし……あぁ、そうだ夜といえば昨日は色々あったな、大和くんとのラビチャに、電話に……と一つずつ思い返していたところで余計な事まで思い出してしまった事に気付き、一晩明けて冷めたはずの熱がまた少し戻ってくる。

意識し過ぎていると、なんだかまるでドラマの恋愛話のようだ……と立場的に寒気すらしてくる。
私にとって大和くんは仕事仲間であって、仲良くはしてくれるけどそういう感情ではないし、向こうもおもちゃ程度にしか思っていないのだから余計な例え話にはデメリットしか見えず、おお怖いと他人事の様に呟いてから二度寝する事にした。


あぁ、なんて柔らかくて暖かなお布団……神様、私の恋人はお布団がいいです……。

そんなアホみたいな微睡みの中、意識が飛んだり戻ったりしつつ7時30分を迎えた。
そろそろご飯食べよう。昨日準備しておいたから温めるだけでいいから楽チン。肉じゃが、味噌汁、ご飯、お漬物、卵焼き。the和食で統一した朝ごはんはとてもお腹に染み入るものがある。体だけじゃなく心まで暖かくしてくれるなぁ。
よく噛んで食べ、テレビを見ながら歯を磨き、その後に洗顔も済ませて着替える(初日は掃除だけと聞かされていたので動きやすい私服だったが、今日は事務仕事もある為スーツを着用している)。

いい時間かな?と思って時計を見てみるもまだ9時少し前。

これでもまだ早いか……まぁゆっくり散歩でもしながら歩いていこう。

私は一昨日借りた着替えとカバンを持って、元栓や鍵を確認して出発。
普段よりものんびりと歩き、公園に寄って缶コーヒーを飲む。歩いて30分位の距離だからゆっくり出来る。

缶コーヒーをひっくり返されたのが一昨日のこととは思えないほどに濃密な2日間だったな……。
思いを馳せながら空を仰ぐと、何故か金色がチラリ。

驚いてまたコーヒーを零しかけるが、今回はしっかりと握れた。

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