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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第8章 Side ~二階堂 大和~




「まぁ、そんなこんなだから改めてよろしくな」


そろそろ電話も切り上げるか、そう思っていると電話の向こうから返事が聞こえた。


『うん、よろしくね……〝大和くん〟』


……はぁ、ずるいだろ。くそ。

あーあ、この電話ではっきりしちゃったわ。
俺、やっぱコイツの事好きだ。
リーダーだからとかアイドルだからとか、自制心がデカくて最初の方は危険人物かどうかの見極め以上の意識はしない様にしてたけど。
少しずつ違う意識の仕方になってきてて……でも、この歳で初めての一目惚れなんて流石に恥ずかしいだろ?だから気付きたくなかった。立場と感情がせめぎ合っていて、すげー苦しい。
けど、今はっきり逃げないで向き合ったみたら不思議なくらい一気に楽になった。
まずは他のヤツら並に仲良くなる事を最初の目標にするか。
そりゃみんなより遅れてんのはしゃーないと思う。
アイツらが一目惚れなら、俺のは二目惚れ?くらいみたいなもんだし。

これから巻き返して、俺のにしてやるよ。みんなの事も大好きだけどさ……これは大声で言うのも恥ずかしいが……アイツのことも好きになっちまった。悪いな、今回のは譲れなさそうだわ。


自分の気持ちに向き合った事で、結構スッキリした。

でも〝大和くん〟呼びがここまでくるものだとは思ってなかったから打撃デカかったなー。でもすげー嬉しいって思うあたり本当に若いわ。

動揺したまま話しちまったが、なんとか今後は砕けて話してもらえそうだ。
これでようやくスタートライン出揃ったか?

けど、お兄さん負けないからなー。

そろそろ寝ると言う声を聞いて、意識させてやる方法を思いつく。突然ドキッとさせられた仕返しをしてやろう。
なんとか、なんとかほかの奴らよりも意識させたい。
その一心で。


「おやすみー……御崎」


何か言われる前にさっさと電話を切る。してやった、と言う気持ちと、名前を呼んだ、と言うただそれだけの事への照れとで、俺の顔はさっきの湯呑み事件と同じ位に真っ赤だろう。
きっと声も出したら震えているはず。相手は少しは意識してくれてるだろうか。


御崎。
そういえば、名前呼ぶのは初めてだったか。一番最初に名字で1度呼んでからは、ふざけてしか呼んでいない。
なんだ、距離を詰めてなかったのは向こうじゃなくて俺じゃないか。
灯台もと暗しだな……。

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