第8章 Side ~二階堂 大和~
付き合ったって訳でもねぇのに、たったこれだけのやりとりで今すっげー満ち足りてる。
あー……明日の仕事頑張れるわ、いつもより。
そんな時、怒った王様プリンのスタンプが届く。
その顔を想像して軽く吹き出してから、笑ってるきなこのスタンプを送っておいた。
スマホのやりとりでだって可愛いとこあんじゃん。
スタンプを使ったから、とかじゃなくて、感情を伝えようとしてるところとか……表情が脳裏に浮かぶから余計なのかもしれないけどな。
さてと、明日から仕事も恋愛も頑張りますか。
アイツらがどれ位本気なのかは分かんねぇけど、お兄さんだって本気出しちゃうよ?
MEZZO"に付くか俺に付くか。どっちに転んでも、それでも最後に俺を選んでくれるように。もう気持ちを誤魔化せないし、ゲームなんて言ってられない。
振り向かせてやる。
初めての本気の恋ってやつか……どんどん俺が俺でなくなる感じがして不気味と言えば不気味だが、それでもアイツへの感情に身を委ねるのもなんだか少し心地よかったりもする。
考えるだけで嬉しくなれるような、そんな感覚。
はは、やっぱ俺らしくねーな。
初めての感情に包まれながら、静かに眠りへと落ちていく。
その日俺は、普段あまり見ない夢を見た。
綺麗な髪がサラサラと風になびく。
手を伸ばしても届かない彼女はひたすら俺と周りにいるメンバーを見つめて、ただただ、慈愛に満ちた瞳に優しさを移しながら微笑む。
ナギじゃないけど……女神や天使がいたら、きっとこんな感じなんだろうな、と思った。
夢にまで見るなんてな……本当にいよいよ初めての恋にして末期感が否めないだろう。
もっと仲良くなりたい、もっとそばにいたい、もっと俺を……俺だけを見て欲しい。
あぁ、俺はこんなにも独占欲の強いヤツだったんだな。
色んな自分の面を知る。色んな自分の感情を知る。
すべて御崎が気付かせてくれた事。
醜くても……こんなにも汚れた感情を向けても……どんな過去があっても……お前さんは俺を見てくれるだろうか……。
ゆっくり、ゆっくり、綺麗で汚い感情は溶けて混ざりあって……俺の中に静かに落ちていくのだった。