• テキストサイズ

家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第8章 Side ~二階堂 大和~




〝待ってちょっと、お兄さん恥ずか〟


と打ち込んでる間に、喜びと動揺でスマホを落としかける。わたわたと掴んで落下を防げた事に胸を撫で下ろしたのも束の間、静かだったはずのこの部屋に微かに聞こえるコール音。
まさかと思って自分の手元を見るとラビチャの電話画面が映し出されていた。
まずい。今まともに話せる気がしないぞ……いや、待てよ逆に意識させるチャンスか。今後の俺への意識改善は、この電話にかかっているかも知れない。
一か八か。出来るだけ、出来るだけ俺を意識させてやるよ。


『ふふ……もしもし』

「あのさぁ、お兄さんそう言うの恥ずかしいんだけど」


電話越しに聞こえた声は今日初めて聞いたはずなのに、もう耳に馴染んでいる。聞くだけで胸が苦しくなるような……ほんともう勘弁してくれ……まじで思春期か。

そういやあいつ、ナギのデートの誘いを見たい番組あるからって断ってたっけ……あのイケメンの誘いを断ったってところがなんだか少し嬉しかったりする。
そこを言ってみると、ドラマの役柄をいじりながら返してきた。
役じゃなくて俺を見てくれればいいのに、なんて少し思ったりもする。
しかし、ちょっとずつ話を聞いていると〝審査〟という言葉が飛び出した。

何か隠してるのか?ちょっとずつ茶化しながら、それでいて引き下がらない俺はどうやら図星のポイントを突いたようだ。
役者やってると結構耳も良くなるもんで、動揺の声色を聞き逃さなかった。しかし、相手も相手でちょっとずつ聞いていくと黙りこくってしまう。


「沈黙は肯定ととるぞー。ま、最初はそりゃお前さんの言う通りだし警戒したさ。社長が話しただろうけど前回も前回だったから尚更な。俺ってば一応グループ内では年長者だろ?あいつらを守ってやんなきゃなんねーの」


そんなのも必要なかったんだけどな、今思えば。警戒するに越したことはないが……やっぱり傷付けちまったのは申し訳ないなと思ってる。そのせいで仲良くなれないから無かったことにしようって考えはもちろん無いし、それで壁作らせたのも俺だし、責任から逃れる事はしない。ただ、それも理解してもらった上で仲良くなれたら、なんて都合のいい考えは少し持っていて。くそ、我ながら俺は本当にずるいヤツだと思う。

/ 114ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp