第8章 Side ~二階堂 大和~
芸能界といい、前回の身勝手なファンといい、俺はもう何かに酷く振り回されんのなんてうんざりなんだ。
あーあ、なんつーか余計なヤな事思い出しちまったな……ため息を一つ付いて時計を見ると21時50分を過ぎようとしていた。
そろそろ連絡来るか?嫌な記憶を振り払うと、これからアイツをどうからかってやろうか考える。
「あー、そろそろ寝る準備すっかな。おやすみ」
「おやすみー」
「おやすみなさい」
就寝にはまだ早いが、挨拶をかわし、洗面所に行って歯磨きを済ませてから部屋に戻る。
多少はワクワクしながらさっきの文章を見返し、やっぱ愛想ねーやつ、と改めて考えながらフッと笑みがこぼれた。
そんなタイミングで会話が更新され、少し焦る。
これ即既読付いたやつじゃねぇか……。
ま、いっか、俺もビビったが向こうも驚いてるだろうし。
〝待ちくたびれて寝ちゃうとこだったぞ〟
〝すみません、ではおやすみなさい〟
〝冗談だから 笑
色々聞かせてよ〟
コイツ……〝笑〟と〝w〟とかつけねーのか。冗談か本気か分かんねえよ。
〝とりあえず初日の反応で審査されていた様で、このまま仕事を続けていい事になりました〟
審査か、俺と同じで社長も前回のことから一応警戒はしていたのか。しかし、自分から声かけたって言ってたのに社長も酷な事すんのな。
送った文章にある〝俺ら商品〟の文字。そう、俺らは商品で、傷物になるのは会社としても避けたいんだと思う。
改めて自分で文字に書き起すと自覚も芽生えるもの。アイツらもそうだが俺も傷物として見られるわけにはいかないんだ。
自分にそんなつもりも無いなら気にしなくていいはずの文字に対する内心のモヤモヤを抱えながらも、話は変わって今後の事に。
付き添いとかその他もろもろのサポートも色々やるって聞いていた通りだったが、明日は炊事以外万理さんが付きっ切りらしい。
まぁ、この業界や芸能事情疎いらしいからそのへんを教えるっぽいな。一日付きっ切り、そう思うと尚更気になってきている自分はそろそろ隠しきれなくなりそうだ、なんて。考えるのも恐ろしい。
俺はたった1日で、俺らしさを失いかけているようだ。
付き添いは誰に付くか聞いてみたところ、俺かMEZZO"かも知れないと言う。
帰ってくる返事はわかりきっているが、ちょっとおちょくってみるか。