第8章 Side ~二階堂 大和~
「やだなー大和さん、みんな〝例えば〟の夢話だよ」
一番最初にあっけらかんと笑い出したのはミツだった。
「俺らアイドルじゃん?若くしてそう言う機会なんて無いから夢見る例え話位したいよな」
「そうだよね!俺なんてまだまだ若いし全然未来の話だからこんな人だったらなーって思っただけですよ」
「私は皆さんみたいに急いでませんよ。立場も考え、社会的にも経済的にもしっかりしてからでなくては。まぁ、七瀬さんは仮に結婚しても頼りなさそうですけどね」
「言ったなー!」
「まぁまぁ2人とも。社会や経済はともかく、年齢的にももっと大人になってからの方がいいかなって僕も思いますし、皆が例え話で御崎さんを上げてるのは親以外で身近に現れた家庭を意識させられるようなしっかりした女性だからじゃないでしょうか?」
ミツの言葉に頷くリク。追い打ちをかけるようなイチに宥めるソウがいて、俺はコイツらもちゃんと考えは大人なんだなと安心した。
「え、俺、フツーに本気だったんだけど」
「麗しい女性、この世の宝デス」
タマ、お前は本当に素直だな!そしてナギ、お前はちょっと日本らしさを身に付けてくれ。
「あっはっは、お前ら面白すぎ。ちょっとからかったらまー本気にしちゃって」
「またそうやって!ホンットいい性格してるよな」
「ははっ、そりゃどーも」
俺が茶化せばミツがむすっとするもんだから豪快に笑ってやった。
みんなそれぞれどっちが本心かなんてわかんないな。
仕事の事も考えると恋愛なんてご法度みたいなもんだろうし、全員それは分かってるだろう……タマとナギは怪しいが。
兎にも角にも、お兄さんアイツに調子狂わされすぎじゃね?
今この場に居ないのに、お兄さんだけなんかアイツに……アイツとメンバーに振り回されてる感あって面白くないなぁ。
後で何か仕返ししたい気分。はは、完全に八つ当たりじゃねぇか。
ま、嫌な思いをさせるんじゃなくて恋愛にドライな奴に少しドキッとしてもらおうじゃないの。
恋愛の駆け引きにも似てるが、言わばこれはゲーム。
初日から恋に落ちるとか思春期にしかないだろ。そもそも俺は思春期でもそんなんなかったがな。
大人な俺はゲームとしてスリルを楽しむ。
そうすることで
俺はまだ、俺のこの子供みたいなみっともない本心に気付かないふりを続けたいんだ。