第8章 Side ~二階堂 大和~
「御崎……とても美しくキュートでした。是非ここなのコスプレをしていただきたいくらいに」
「マネージャーが泣くぞ」
「NO!それは良くないデス!レディ泣かせとはワタシも罪深い……選べない2人のプリンセス」
コイツにとってのここなコスがどれ位の愛情表情なのかは知らんが、かなり重症だ。あー、いや、コイツの場合年がら年中レディとここなの事で脳内お花畑か。
ナギの一言で収まっていたそれぞれの感想が飛び交いだした。あーあー面倒くせぇ……飛び火しないうちに風呂入るか。
俺はそっとその場を後にして風呂場に向かった。
さっと全身洗うと、一番風呂に肩までどっぷりと浸かる。ピリピリするような心地良さと、足の先から温まる快楽。アイツが念入りに掃除してくれていたのだろう、僅かにあったパッキンのカビもなくなってる。割と擦っても落ちなかったんだが……アイツやればなんでもすごいんだな。おかげで普段よりも居心地が良い。
しかし、それと同時に色々思い出して深い溜息が出た。
アイツと居るのは楽しいんだが、ちょっとみんな懐きすぎじゃないですかね?もうマネージャーと同じくらい懐いてるって……早すぎだっつの。
それにいくらなんでも警戒心なさすぎだと思うんですけど?まぁ、警戒する必要がないって俺も無意識に解いちゃってたから人の事は言えねーんだけどさ。でも今後もあぁだといつかそのうち高い壺とか買わされそうでお兄さん心配。
それとは別に、きっとアイツには人を惹き付ける魅力みたいのがあるんだろうな。下手するとアイドルの素質あったりすんのか?なんてな、流石にもうこの事務所でアイドル増やしてもそれこそ人手不足だし。何よりアイツ多分そう言うのやらなさそうな気がする。
……いや、仕事ですって言われたらやるかも?湯呑み事件の時も照れと言う文字があなたの辞書にありますかと聞きたくなるほど冷静だったしな……社長に仕事って言われたらあながち断らなさそうな気もする。
あぁ、やめだ、やめ!ったく、こんなに女の子の事ばっか考えるとか思春期の男子学生かよ、笑えねぇ冗談。
ただ、確かにおもちゃ取られるのは嫌だっていう気持ちはあるかな。
……学生どころか幼児じゃねぇか……いや……俺もアイツらと同じようなもんか。ははっ、犬だな。
自嘲気味に笑いを零すと、俺は風呂を上がり着替えを済ませて部屋に戻った。