第8章 Side ~二階堂 大和~
ナギといつも通りのノリで談笑したり、そこにアイツが挟まってきたりしても大丈夫だった。その後のおかわりを頼む動作も完璧だった。それ以外は極力他の奴を見たり皿に集中したりしていたが……まぁでもよし、だいぶ落ち着いたはず。
と言うか、改めて思い返すと意識し過ぎてて逆にそこが恥ずかしい。間接キスがどうとかじゃなくて、柄にもなく露骨に照れすぎた俺自身がもはや恥ずかしかった。
食事も終わり、アイツが片付けを始めた。俺らはいつも通りのクセもあるが、皿の量も量だからシンクまで運んでいく。律儀にみんなに笑顔だありがとうと返しているアイツは余程マメなんだろう。
食器の擦れる音と水道から流れる水の音を聞きながら、そういえば今日が自分達のテレビ番組の日だと思い出す。
この日は今人気沸騰中のお笑い芸人がゲストとして来ていて、すげー盛り上がった回だったっけ。みんなで笑いながら見返していると、タマがそっと立ち上がり、アイツの所へ行った。
そーいや王様プリンあったもんな。俺はテレビに目を戻すと自分がどう立ち回れているか再確認する。テンポもさほど悪くない、だいぶバラエティにも慣れてこれたか。
多少なりとも安堵を覚えていると、全員分の王様プリンが配られた。無理矢理おかわりしたせいで苦しい事もあり、名前を書いて取っといて貰うように頼む。
隙あらば容赦なくタマに食われそうだしなー。
そうこうしている内に、アイツが定時らしく丁寧に感謝を述べている。そうか定時か。なんか今日一日ずっと一緒に居たから、当たり前にまだ居るもんだと思ってたけど……よくよく考えてみればここに住んでる訳じゃねーもんな。
なんだか少し物足りない気分だ。もう少し話したいような、関わっていたいような。……いや、明日も仕事しに来るって分かってんのに、何言ってんだ俺は。
周りを見ると……なんだ、他の奴らも似たようなカオして。
コイツらの酷く純粋でキラキラとした目を見てると、母親に群がる子供と言う例えより、構ってもらいたがりの犬の兄弟って感じの方が正しく感じてくる。
みんな初日からコイツのこと気に入りすぎかよ。
……いや、俺も大概か。まぁ、でも俺にとってこいつはフリスビーを投げてくれるご主人じゃなくて、フリスビーそのもの。
おちょくって遊ぶのが楽しいんだ。
……フリスビー取られるのが嫌なら早く駆け出して取っておかないとな。