第8章 Side ~二階堂 大和~
んで、気付いたらいつの間にか俺はタマとソウに抑えられていて、のたうち回ってたミツはイチに救助されている。ナギはと言うと、いつもの調子でアイツの手を取っていた。
ナギこそ一番危険人物じゃねーか。
でもそれはリクの帰宅であっさりと引き剥がされたから、まぁいいか。
いや、まぁいいかって何も俺が決めることじゃねーだろ。
少しだけ正気になってみるも、思い返すと色々俺が悶絶しちまいそうだからそのままもう1度酒をあおる。
だいぶ温くなったそれは、俺の睡眠欲を引きずり出してきた。
ぼんやりする頭は考える事をやめ、暴れたことで酷く回ったアルコールが俺の思考を拭い去っていく。心地よい微睡みの中、後少しで意識を完全に手放すと言う時にタマに乱暴に揺さぶられる。
なんかヤベーって言ってるのはとりあえず聞こえた。
「んだよ、うるせーなタマ。お兄さんちょうど今いい感じにアルコール回って眠……く……」
薄れかけていた意識を何とか繋ぎとめて視界のピントを合わせると。
そりゃまぁさっきのプンプンなんて可愛かったもんなんだな、と思わせられるような殺気を放ちつつ、笑顔なのにとても凶悪な何かを感じる威圧感に俺は冷や汗が流れる。止められたのに飲み続けて、挙句もうすぐ飯なのに寝落ちしかけてたせいか。
あぁタマ、確かにこれはヤベーわ。
大御所監督にも匹敵するような圧を、こんな同い歳の女性から感じるなんて未だかつて無い経験だ。
同い年の売れっ子女優とかで威圧感と言っても、せいぜい高飛車な感じか、調子乗ってる小生意気な感じ程度で終わるから微塵も恐怖感はない。
「何か言う事は」
「夕飯前に飲み過ぎてしまい申し訳御座いませんでした」
「はい、それで」
「目が覚めました、すみませんでした」
「よろしい」
こんなん完全に覚めるだろ……。
普段だったら怒られてやんの、とかミツあたりが笑い飛ばしてくれそうなんだが、今はそれも無い。触らぬ神に祟りなし、誰もがビビっていて言葉を発せず、俺もバツが悪くて酔い醒ましにテーブルの上にあった湯呑みを口に運ぶ。
当の本人はキッチンに戻ったが、ふと思い出した様に振り返って俺の名前を呼んだ。
咄嗟に飲んでいた茶をテーブルの上に戻し、正座でキッチンの方を向いて返事をする……いや、ここまできっちりするつもりはなかったんだが、これは完全に無意識だった。