第8章 Side ~二階堂 大和~
「ちょっと、大和さん!それ以上飲んだら晩御飯入らないでしょう!」
どれ位時間が経ったか、なんて覚えてない。何を考えていたのかも気にしていない。今日一日笑ったり困ったり驚いたり迷ったり寂しそうだったり、そんな風にコロコロと変えていた表情が今度はムッと怒っているのが見える。
見てて飽きないな、可愛げあって面白くて、お兄さん嫌いじゃないよ。
この感情が酔いから来る一時的な気の緩みなのか、割と本心なのかは分からない。
「んー?だーいじょうぶだって、お兄さん結構胃袋大きいんだぞー、なんならお前さんを食べちゃうぞー」
がおー、とおどけて見せれば、呆れたように溜息を吐かれる。でもその後に軽く笑って、俺の斜め前に腰を下ろした。
お前さんも飲むかい?そう聞こうかと思ったが、開いたリビングの扉に注目して言葉を止める。
ミツが帰ってきた。そして、お手伝いさんからの労い言葉を貰うとそりゃまーわかりやすいように照れるのなんの。これは完全に嫁さんとして妄想したな?どいつもこいつも……俺のおもちゃだっつの。
そして、その流れで当たり前の様に俺の前……アイツの横に座るもんだから、なんだか面白くなくてだる絡みしてやる。
そんなの全く気にも止めず、またみんなのお母さんって言う言葉を出すが……やっぱり相手は母親よりも嫁さんとして考える様で。ますます面白くない。
「て言うかー、年下って言ったって1個しか違わないミツにはタメ口で話すのにーお兄さんにはタメ口で話してくれないとか、お兄さん拗ねちゃうー」
後々になると羞恥心でどうにかなってしまいそうなほど子供な振る舞いをするも軽くあしらわれてしまい、その間にミツはアイツの耳元で何かをボソボソと言う。
なぁおい、ミツくん?ちょっと近すぎやしないかい?
朝の密着は棚に上げて、ミツからアイツへの急接近に不機嫌度がグンと上がる。
完全に八つ当たりと言うかおもちゃを取られた子供の駄々こねと言うか、見苦しい程の変な独占欲をミツにぶつけた。
はは、ざまーみろ。ちょっとだけそんな気持ちもあったが、くすぐってるうちに俺自身も普通に楽しくなってきて歯止めが効かない。
その後、あまり覚えてないがいつの間にかナギも参戦してて、盛り上がりは止まらなかった。