第8章 Side ~二階堂 大和~
冷蔵庫に物を片付けていると、呼び鈴がなったから俺が行くことにした。受け取ってみるとアイツが買い物に行っていたスーパーの宅配サービスでこれまた大量に米やら野菜やらが詰め込まれている。
おいおい、マジでどんだけ買ってるんだ……。
戻ってからも収納三昧、冷蔵庫から戸棚まで久々にここまで食べ物が詰まっているのを見た。
その途中、タマが王様プリンに反応して飛び込んできたりもしたが、珍しい事にタマもすぐコイツに懐いたようだった。
環くんと呼んでもらえてそれはそれは嬉しそうなことで。
なんで俺だけ頑なに〝さん〟を貫かれるんだか。……いや、まぁ第一印象は多分あんま良くないだろうし、そのせいか。
なー、これを機に俺も砕けて呼んでくれたりしないかな?なんて面白半分で声をかけようとした「なー」ですらタマに遮られる始末。人を疑いの目で見すぎた罰でも下っているんだろうかと思うほどのタイミングで邪魔されたおかげで、聞き直された頃にはからかう気持ちも失せていたから冷凍物のことを伝えて誤魔化しておいた。
ちょっと内心スッキリしない面もいくつかあったが、とりあえずリクとタマは仕事に出かけ(やはりと言うかこれも把握済みだった事には感心した)また昼間と同じように俺はソファに腰掛け、アイツは料理をしている。強いて違いを上げるなら、日が少しずつ傾いてきた事と、スッキリしない面を忘れるように酒を飲み始めた事位だろうか。
この光景は昼も思ったが嫌いではなく、上機嫌になりつつ酒をあおっているとハニカミながら今日のお礼、とツマミまで用意してくれた。感謝の言葉を口から出してはいるものの、内心最初の案内はお前さんを計るためだった、なんて思うと罪悪感がチクチクと良心を刺す。
冷凍物の枝豆と焼いただけのイカでもあいつの感謝がこもっててうまい……んだと思う。でも、どこか心に申し訳なさがあるせいであまり味を感じない。感謝を素直に受け取れる立場ではないからか?罪悪感で味も分からなくなるようなメンタルの持ち主じゃなかったはずなんだがな……。
変に考え込みすぎる事から逃げたい一心で無意識にペースをあげてしまい、俺はツマミがあると言う事実だけに集中していたせいか、いつの間にか一缶、二缶と空けてしまっていた事に気付く。その頃には上機嫌になり、最初の気持ちは見る影もなく消えてくれていたのだった。