第8章 Side ~二階堂 大和~
最近休みに出掛けることも無かったしある意味新鮮だが……来た初日に何かトラブルありましたーじゃ可哀想だしな。
そう思って事務所から歩き始めてしばらくすると、アイツを見つける。ん?横に誰か歩いてるな……あれは……リクか?やれやれ買い物袋多すぎだろ、どんだけ買ったんだ。
面白そうだから少し後ろに回って話聞いてみるか。
「うん!……あ、でもこれじゃあオレの罪滅ぼしには……」
「いいっていいって!今日の晩御飯はオムライスにするね」
一体なんの話をしてるんだコイツら。罪滅ぼしからオムライスって全く脈絡がみえねーぞ。笑いながら声をかけようとした時、リクがもう1度口を開く。
「ありがとう……なんかこういうのって本当にお母さんとか奥さんみたいでいいね!……って、あっいやその!そういう意味じゃなくて!!」
「ふふ、まぁみんなのお母さんだと思っていいからね!」
はは、どっちも天然てヤツか。可愛い夫婦じゃないの、いやー悔しいねー妬けるねー。
…………妬けるね?
冗談の筈だがどこかに見える本音。
なんだかさっきの昼の光景をふと思い出して、俺のいいおもちゃなのに、と訳の分からない独占欲が芽生えていた事に気付いたのは言葉を発した後だった。
「んじゃ、歳的に俺がお父さんかな?」
はぁ、子供か?馬鹿か?俺は。
自分の突拍子も無い理解不能な行動に心底溜息を吐きたかったが、大人しく飲み込んで作り笑いを吐き出す。
変な女々しさが芽生えた自己嫌悪にイライラしながらも、重そうな荷物に指が千切れそうなヤツが無理し続けてるもんだから変な感情は無かったことにして、荷物持ちを代わる。
俺は割と普通に持てるが、これは女子が長々と持ち運んでいい重量じゃない。いつリクと合流したかは分からないが無茶しすぎだ。
リーダーらしくちょっと説教した上で帰宅するとソウが迎えてくれた。
新人とソウも挨拶しあって、冷蔵庫に物を片付けに行く。
すれ違ったソウは、どこかちょっと上の空と言うか、わずかばかりではあるが赤面していたのを俺は見逃さなかった。
今回のお手伝いさんは自分から寄ってくミーハータイプのヤバイやつじゃなくて、人を惹き付ける天然タラシタイプのヤバイやつだったか。
恐らく無自覚なんだろうな、リクの露骨な反応にも全く気付いちゃいない。と言うかわかり易すぎるリクもリクなんだがな……。