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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第8章 Side ~二階堂 大和~




少し間を開けてから仕切り直し、


「……召し上がれ、大和さん」


さっきこっそり見ていた優しさ溢れる笑顔で言われる。
表情に、声に、仕草に、俺は流石に一瞬言葉を失った。
それじゃタメじゃなくてまるで新婚だろ、と柄にもなく内心恥ずかしくなる。
しかし悟られるのはもっと恥ずかしい。さっさと取り繕って飯を食う事で誤魔化す。

……美味い。普通にそこいらの定食屋よりも美味いと思う。

真面目で誠実そうな立ち居振る舞い、笑顔、仕草、美味い飯、さっきの不安げな表情。
その一つ一つになんだかいつもより調子が狂わされている様な、どこか不思議な感覚に囚われる。
ちょっと前回の件もあって警戒する為に気にしすぎたせいか。マネージャーぐらいしかまともに関わらないし、そのせいで免疫が薄くなってたんだろうな。
妙に納得しながら飯を食い終えた俺は、早起きの反動でかなり眠気に襲われている。
それに気付いたお手伝いさんは俺に部屋で寝るよう促してきたし、俺自身限界だったから素直に部屋に戻って寝る事にした。




……数時間後。時刻は15時22分。

思ったより途中で起きたな。そう思いながら喉が乾いている事に気付き、飲み物を取りにリビングに向かう。
通りすがりにアイツとすれ違わなかったから、キッチンにでもいるのだろうかと思ったがそこにも姿は見当たらない。
一つ欠伸をすると、ソウが帰ってくるのが見えた。


「おー、お疲れさん」

「ありがとうございます、今起きたんですか?」

「ん、まぁそんなとこ」


俺は話をしながらテーブルの上に書き置きがあるのを見つけた。
指定している帰宅時間は15時少し前。時間には恐らくきっちりしてるだろう人間が20分ちょいもオーバーしている?
何かあったのだろうか。少し気になり、柄にもなく急いで着替えて変装をし、そしてつい勢いでメモを上着のポケットに入れると玄関に向かった。


「えっ?起きてすぐ出掛けるなんて珍しいですね」

「散歩だよ散歩ー」


適当に返事しながら早歩きで歩みを進める。なんでわざわざ〇×スーパーなんだか。そんなちょっと遠いとこ選ばなくても近くにデパートもあっただろ。

溜息を吐きながら自分のよく分からない行動には目を向けない事にした。


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