第8章 Side ~二階堂 大和~
「なになになに、お前さんしっかりした見かけによらず案外おっちょこちょい?」
まぁ意図せずこの体勢になってしまったわけなんだが……
前回の子だったらここまで近くはなかったが似たような距離になった時キャーキャー騒いでファン丸出し状態で手に負えなかったものなんだけど……さて、どう出るか。
そんな内心の査定やちょっとした警戒なんて気付きもせず、顔には出してないけど僅か(普通の人なら全然気付かない程度)に嫌そうなオーラを出しながらすみませんと謝られる。
うーん、騒がれないのは良かったけど、流石に女子がドキドキしそうなシチュエーションで嫌そうな雰囲気出されるとお兄さんもちょっと自信なくしちゃうぞ……。
まぁ、心配事がただの心配で終わってくれそうならそれでいいか。
「いやいや、カワイイ子が来たって子供組が騒いでたから、どんなもんかちょっとからかいたくなっただけよ、ごめんなー」
クスクスと笑いながら解放してやってると、万理さんから衝撃の事実を知らされる。
え、同い年……?
見た目は大人っぽいと思ってたけど、見る人が見れば庇護欲掻き立てられそうな危うさは子供特有のそれだと思ってたんだが……お兄さんの見極める目もだいぶ落ちたかな?
眼鏡の替え時かもしれない。
まぁでもちょっとからかえば少し反撃してくるし、面白いなこの子。いや、同い年にこの子ってのも失礼か?
とりあえず、今回は俺の熱狂的ファンでない事は分かったけど、もしかしたら他のやつのファンかも知れないし。
かと言って全員と対面してるのを俺が見たわけじゃない。
どうやら会うのは俺が最後だったらしいから、上手いこと引き出しを引けないだろうか。
万理さんに俺が珍しく早起きする事になった経緯を説明し終わる頃に、お手伝いさんは声を発する。
「ええと……自己紹介が遅れましたが、本日よりこちらで家事手伝いとサポートをさせて頂くことになりました瑠璃華御崎です。よろしくお願いします、二階堂さん」
「あー、よろしく」
俺は自分のコーヒーと、瑠璃華御崎と名乗ったお手伝いさんの分、万理さんの分を入れて全員に渡す。
渡すついでにお手伝いさんのスケジュールを聞くと、部屋なども案内するらしい。全員の名前出す機会になるし丁度いいな、と面倒ながらも俺が案内役を引き受ける事にした。