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家事のお姉さんと歌のお兄さんと

第7章 長い1日の終わり




『ナギに言ってた見たい番組ってそれのことかよ……』

「ご名答、さすがの洞察力。大学の先生なだけありますねー」

『それは役だっつの』


内に秘めた今日の仕返しと言わんばかりにおちょくってみる。案のムスッとした感じの声が聞こえる。

電話をしながらでもドラマを見るのはやめていないが、テレビからもスマホからも同じ声が聞こえてきて面白い。


「なんか……不思議な感じ」

『何が?』

「テレビで演じてる人が普通にフレンドリーに電話かけてきてる事実が。この電話も例え審査の……あ」


ついつい気にしていたせいでポロッと出してしまってから、あっ、と気付く。


『ん?この電話も審査ってなんのことだ?』

「いえ、なんでもないです」

『いやいや、お兄さん超気になるよ?』

「……」

『おーい、もしもーし?』


どうしよう、なんて言おう。フレンドリーに接してる様に見えて人間としての大きさを計られていたのがほんのちょっと悲しかった、なんて口が裂けても言えない。社会人として新人の評価をするのは至極当然な事だし、自分は既にそれのどちらの立場も経験済みだ。それをなんだかよく分からないけど気にするだなんて、二階堂大和と言う存在に負けたようでムカつく。


「もしかしてお兄さんが何かお前さんを見定めてるって思ってる?」

「あ……そ、そんなのは社会人として当たり前です、新人がどういう奴なのか見定めるのが筋ってものですし」


なんとも鋭い!分かってらっしゃるのね!内心嫌味しかうかばないが、事実を言われて動揺してしまい少し吃ってしまう。


『なるほど、道理でラビチャ少し素っ気ないと思った。いや、元々そう言うの子なのかなーとも思ってたけど』

「……」

『沈黙は肯定ととるぞー。ま、最初はそりゃお前さんの言う通りだし警戒したさ。社長が話しただろうけど前回も前回だったから尚更な。俺ってば一応グループ内では年長者だろ?あいつらを守ってやんなきゃなんねーの』


イチはともかくあいつら結構甘い所あるからさ、と付け加えると大和さんは話を続ける。言ってることは全くもってごもっともだし、理解もしている。そして何よりグループ思いな所やシビアであろう特殊な仕事をきちんとこなしているらしい話を聞くと本当にいい上司像に近い。からかいが過ぎたり面倒くさがりな所は置いておいて。

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