第6章 晩御飯と王様プリン
今日は初日だし寮を出る前に、全員にお礼の挨拶しなくちゃ。
「皆さん!今日は1日ありがとうございました!皆さんが気を遣って下さったお陰で、申し訳ない気持ちもある反面、とても楽しくお仕事をさせていただく事が出来ました、ありがとうございます!」
「ん?なに?ルリちゃんもう帰るの?」
「うん、私お仕事20時までなんだ」
「気を遣うだなんてそんな!むしろたくさん気を遣わせてしまって逆に申し訳ないくらいですよ!ファンの方々の前だとキチンとアイドルをしていようと身構えるものなのですが、御崎さんはあまり僕達をご存知ないと伺っていたので逆にホッとしたと言いますか……」
ちょっと寂しがっているらしい環くんの後に壮五くんがあせあせと答えてくれる。マイナス面だと思っていた「あまり知らない」事が逆にプラスの効果として現れたのか。もしかして、社長はこれを狙って……?
だとしたらとてもアイドル思いの切れ者だ。良い社長のいる会社は業績も雰囲気も良い事が多いと聞く。小鳥遊プロダクションはとてもいい会社なんだろうな、皆がアットホームでとても居心地がいい。それは社長だけでなく皆が素敵な人達だからだと言うのもあると思う。
「あと勘違いしてるみたいですけど、私達は貴女に気なんて遣ってませんからね。貴女は仕事ですが寮での私達は仕事ではありません。ファンでも何でもない貴女には気なんて遣いませんよ」
うわぁ……ここで穏やかだった難関その2が言葉の暴力に出てくる。とても棘だらけだ。
「確かにここに仕事に入る前はあなた達の事は名前くらいしか知らなかったし、正直なところ個人の名前もあやふやでした。
でも、帰ってからたくさん活動を調べて、ネットに上がってるものを見聞きし、IDOLiSH7に惹かれ、今まで芸能人に興味がなかった私が初めて心からのファンになれました。
そして今日1日を通して素の皆さんを見れて、人としても好きになり、そしてこの仕事に就けた事をとても嬉しく思っています。
そして、そんな皆さんの迷惑にならないよう、影からこっそり支えていこうと思いました。」
これならどうだと思いの丈をキチンと返答すると、一織くんは口元に手をやると何かボソボソと呟く。両脇に居た大和さんと三月くんがチラッと見たくらいで他の人には聞こえてないらしい、なんて言ったんだろう。