第6章 晩御飯と王様プリン
「あっ、それよりもさ、王様プリン!」
「なるほど、それが欲しくてこっちきたのね」
私は手を止め、今日買った王様プリンを冷蔵庫から取り出すと、人数分のスプーンを付けてトレイに乗せて皆に持っていく。
環くんの意外な一面を見た後に、やっぱり子供だなと思わせるワードが飛び出て笑っている私のちょっと後ろ、当の本人はそんな事気にもせずに王様プリン、王様プリン、とウキウキしていた。
「俺、流石に腹いっぱいだから明日食うわ」
「そんな事だろうと思いましたよ」
「あぁそれとフタに名前書いといてくんない?タマに食われちまう」
全員に配ると1人だけ返却してくる大和さん。
そりゃあんだけ飲み食いすれば大の大人でもデザートの余裕は無いだろう。と言うか、よくおかわりまでして食べきったな……当たり前に1人前盛ったのに。
ちょっと驚きながらも〝健康に気をつけましょう。大和さん〟とプリンのフタの上に被せられているパッケージにメッセージと名前を書いて冷蔵庫に再度入れてくる。
「入れておきましたよー」
「サンキュ」
ソファに腰掛けて王様プリンを頬張る環くんは、やっぱりサイコー!なんてはしゃいでる。何かのご褒美の時はこれをあげようかな。残ってた茶碗洗いを終える頃には皆デザートの時間も終わり、冠番組もいい感じに盛り上がりを見せていた。
「そうだ、お風呂は掃除してお湯も貯めてあるし、入りたい人から入ってね!」
時計を見上げれば時刻は7時35分。そろそろ私の終業時間だ。
今までこんなにも仕事が終わるのが嫌だ、なんて思う事はなかった。彼等がアイドルだから、ではなく7人の人間として一緒にいると楽しいからもう少し一緒に居たい、なんて思うようになってた。
でもきっと一緒にいて楽しい、と言う気持ちにさせる事が出来るのもアイドルの素質なんだろう。下手すると私が気付いていないだけで、全員そうなる様に気を使っているからなのかも知れない。
改めてそう考えると知らない人がいて気を遣い続ける方がストレスも貯まるかもしれないし、やはり仕事は仕事と区切りを付けないといけないね。
ご飯を作り掃除をし、お風呂を用意して茶碗を洗って、今日のお仕事は終わり。そうだ帰る前に隣の事務所に寄るように言われてたっけ。もう寮でやる事は他に無さそうだし、事務所で何かお手伝い出来ることは無いか聞いてみようかな。