第6章 晩御飯と王様プリン
それからしばらくして皆がだいたい食べ終わり、後片付けに入る。
私の仕事だから座ったままでいいよと伝えたものの、皆それぞれ自分の食器をキチンとシンクまで運んでくれてとてもありがたい。
私がカチャカチャと洗い物をしている間、誰も特に部屋に戻る事もなくテレビ番組を見ているようで、時折笑い声やCMの音が聞こえてきた。
「こん時のミツのMC、ほんとに冴えてたよな」
「あれはゲストの芸人のフリがすっげー上手くて助けられたんだよ、ウケてホッとした」
「それでもどんな変化球でもキチンと返せる三月さんの臨機応変さは、僕も見習いたいです」
そんな会話にチラリと振り返ると、どうも見ているのはバラエティのようで、それはアイドリッシュセブンの番組……彼等の冠番組のようだった。
改めて思うとテレビの、ましてやゴールデンタイムの冠番組を持っている人達だと言う事を思い知らされる。今日1日を一緒に過ごした皆が、テレビの向こうでも同じように笑っていてとても現実味がない。
今まではこの時間はデスクに向かって書類整理やお得意先への連絡が多く、休憩を取ることすらままならない状態で仕事にのめり込んでいたから、こうした彼等の活躍も私は何一つ見てこなかったんだな。
そう考えると、なんだかとても悔しいというか、勿体ない気持ちに駆られる。
「はぁ、あんな会社に労力を費やしてた自分が馬鹿馬鹿しい……皆の番組を見ながら晩酌した方がよっぽど有意義だったんだろうに」
「なんかあったのか?」
「わ、脅かさないでよ環くん!」
「わりぃ」
おもむろに呟いてしまった長めの独り言は誰にも聞こえない大きさだった筈なのに、いつの間にか背後に立っていた環くんに聞かれていた。
「なんでもないよ、この時間は今まで仕事してたから番組見れてなくて、今こうしてここで働かせてもらってるのに皆の事あんまり知らないからちょっと申し訳ないなって思ったの」
「んー、それが仕事だったんだろ?なら仕方ないじゃん。今日から知っていけばいいと思う」
意外、と言ったら明らかに彼には失礼なのだが、仕事は仕事と区切りを付けれているらしく、子供っぽいところがある人物にしてはとても大人な慰め方だと思った。
「ありがとう、環くん」
心からのお礼に環くんは「お、おう」なんてちょっと照れ臭そうにしている。鼻の頭が赤くて可愛い。