第6章 晩御飯と王様プリン
そう言えば叩き起したのはいいけど本題をわすれるところだった。
「そうだ大和さん」
「はいっ!なんでしょうか!」
酔い覚ましにテーブルの上にあったお茶を飲んでいた大和さんだったが、ガバッと姿勢を正すと正座で私のいる台所の方を向く。そんなに怖がらなくても……昼間のユルさは微塵も感じられない程キビキビした対応に、少し笑いが込み上げてくる。
「ふふ……酔いは覚ませそう?オムライス、焼き加減はトロふわがいいですか?堅焼きがいいですか?」
「へっ……あっ、あぁ大丈夫だ、大丈夫。ええと、トロふわかな……」
目を白黒させながらキチンと答えてくれたし、どうやらだいぶ酔いが覚めたらしい。良かった良かった。お茶も飲んでたみたいだから、そのうちもう少しシャッキリしてくるだろう。
ん?お茶を飲んでいた……?
あれ?さっきお茶入れたの私の分だけだったんだけど……?
って事は……
「大和さん、それ……」
「ん?」
再度大和さんの口元に運ばれていく湯呑みを指さすと、苦笑いしか浮かばない。関節キスかと言う気恥ずかしさもあるけど、まあ大和さん天才役者だからキスなんてたくさんしてるだろうし、私がそれを飲まなければ良いだけの事。
「ええと、冷めてるでしょう?新しいの入れますよ」
「え、別にいいって。熱いと飲めないだろー」
うわこの人猫舌か!上手い事、事実を説明せずに回収出来ると思ったのに。
どうしたものかと頭を抱えながらも、仕事の手は止めないのはもはや仕事人間の性とも言えるだろうか。そろそろ全員分のオムライスが出来上がるところだ。
「あーーーー!!!」
「!?」
突然大声を上げたのは、さっきまで死ぬほどくすぐられていた三月くん。わなわなと震わせた指で大和さんを指すと
「それ、さっき御崎が飲んでた湯呑みじゃねーか!」
「ええーーー!」
あろう事か避けていた問題点を浮き彫りにしてしまい、全員が大声を出す。
ぶはっ。
その瞬間大和さんが噎せ返る音が聞こえると同時に、蜂の巣をつついた様な騒ぎになってしまった。
もうみんながみんな言いたい放題話してるから、私は誰が何を言っているのか微塵も分からなかったので、かなり居心地の悪さを覚えながらも知らん顔。誰とも顔を合わせないようにしながら食卓に食事を運ぶだけの簡単なお仕事をこなすしかない。