第6章 晩御飯と王様プリン
時計を見れば18時15分。ワイワイやっているうちにいつの間にかこんな時間になっていたのか。
「あっ、残念だけどやっぱりお茶は今度にしよう?陸くんもああ言ってるし、みんなご飯の時間だよ!」
ナギくんのNO!!は聞こえなかったふりをしてここぞとばかりに逃げ出し、食事の準備を始める。
「そうだ!トロふわがいい人~?」
「脈絡が無くてわからないのですが。もう少しきちんとした主語を使ってください」
「ごめんごめん。オムライス、トロふわが食べたい気分の人~手を上げて~」
ナギくん、環くん、三月くんね。
「じゃあしっかり焼いて巻くのがいい人~手を上げて~」
陸くん、壮五くん、一織くん。
……ん?1、2、3……あれ。ひとり足りない。
ざっと見回すと大和さんがビールをあおりながらも船を漕ぎ始めている。夕飯前だから程々にって言ったのに。言う事を聞かなかった22歳児にちょっとムッとする。
「誰か。そこの酔っぱらい叩き起して」
「!」
私の一言で全員が同じ顔になった。どこかで見たことあるなと思ったけど、そういえば紡ちゃんも最初こんな顔してたっけ。
顔怖いのか……怖がらせちゃいけない、皆は悪くないもの。悪いのはそこの酔っぱらいのみ。確かに仕事はオフだし、私の事色々サポートしてくれたけど……仕事の基本は健康な食事から。ビールだけで夕食を済ませるなんて、私が許さない。
みんなを怖がらせないように、笑顔を作ってなるべく優しくもう一度お願いする。
「……誰でもいいよ?」
「ひっ」
誰かが息を呑む音すら聞こえた。え、これでも怖いのか……軽くショック。
「おっ、俺、起こし、ます」
何故か珍しい事に環くんが敬語で敬礼をしてくる。私のイメージどんなんなんだ一体……。
「やっ……ヤマさん!ヤーマーさん!ヤベーって、起きろって!早く!」
「んだよ、うるせーなタマ。お兄さんちょうど今いい感じにアルコール回って眠……く……」
眼鏡を持ち上げて目を擦りながら、半ボケ状態の大和さん。そんな大和さんに向き合う私。周りを怖がらせても良くないし、笑顔は忘れない。
「何か言う事は」
「夕飯前に飲み過ぎてしまい申し訳御座いませんでした」
「はい、それで」
「目が覚めました、すみませんでした」
「よろしい」
笑顔を作りながら台所へと戻る。